GRL×齊藤工独占インタビュー第二弾2

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GRL(以下G):他にも作品におけるよもやま話はありますか?

齊藤工さん(以下S):後半に関しては金子ノブアキの決断も格好いいなと思いました。

台本ができる前にエンディング曲だけは決めていました。ハナレグミの曲だけど笹川美和さんが歌ったボーカルの『家族の風景』を使いたかった。なぜなら、この作品では"お母さん"を描きたかったからです。

G:確かにそれは感じました。

S:だからこそ、女性である笹川さんの歌声が超重要だったんです。それは作品を撮る前から決まっていて、その許諾が取れなかったらこのプロジェクトをやめるぐらいの姿勢でした。ロケハンでもロケ地であの曲を流して、あの曲がフィットするかを確かめました。その重要な曲がある中で、金子ノブアキに映画の音楽を依頼したので、自分の生み出したものじゃない楽曲があるなかで、色々試行錯誤してくれました。言うなれば、シングルマザーと再婚して連れ子を育てているみたいな感じなのかな。

G:そっちもお母さんが出てきますね(笑)。

S:そうですね。金子ノブアキは前半に音をつけて、後半でシーンが変わるときに音をつけないようにしたんです。でも僕は全く逆で、後半が未知数だったので、音で補いたかった。なので後半こそ頼むよ!みたいな感じでいたんですが、金子ノブアキは「エンディングの笹川さんの歌もあるし、後半は音をなくそう」と提案してきました。「素晴らしい役者さんたちの表現があるから、音を入れないほうがいいよ」……と言ってくれました。金子も音を担当するうえで、沢山トラックを作ってくれました。でも主張するんじゃなくて自分と同じように引き算をしてくれたんです。

G:なるほど。

S:引き算の作品に、引き算の音付けをしてくれたので、最終的にいい感じに落とし込めたと思います。

G:かなり音も効果的に使われているようで、全体にマッチしていましたね。そこにあのエンディング曲で……となる流れはすごく良かったです。

S:ありがとうございます。やっぱり準備して撮影するという部分が監督業では重要なのですが、仕上げの重要さという部分もこの作品では日に日に感じました。最後の追い込みでは編集室で朝を迎えることも多かったんです。で、朦朧として何がいいのかというサジ加減もわからなくなることもありました。だから出演者を編集室に呼んで、見てもらって忌憚ない意見をもらって、それを受け入れながら絵を固めていきました。最後のほうは、フルマラソンを走ったことはないですけど、最後のトラックに入って来た時みたいに、フワフワして何がいいかわからないみたいな状態だったんですが、後味(笹川さんの歌)が決まっていたので、そこにどう向かうかという方向性ができていたのは強みでした。ある程度、脱線しても最後で回収してくれる部分もあったので。
でも、本当に編集がツラい作業でしたね(笑)。

G:でも、そのツラい作業があったからこそ、これだけいい作品に仕上がっているんだと思います。

高橋一生さんのキャスティグが作品の大きなカギとなる

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S:実は出演して下さった高橋一生さんは、この作品の直前にお母様を亡くされていて。父と母は違えど、その境遇が役とすごくご自身に近すぎていて。だから演じるという感じじゃなくて、心を破きながら参加して下さったんです。

G:ある意味、自分の素というか……。

S:すごくツラいことを強いてしまったな……と。最初は、境遇が酷似しすぎて「今回は耐えられないので受けられません」と断られていたんです。でも一生さんが納得する台本にするので、どうにか出演してください、一生さんじゃなきゃこの役は考えられない……と、粘らせてもらいました。一生さんの出演の許諾は最後まで得られなかったんです。でもスケジュールだけは空けて下さっていて。

G:なるほど。

S:最終的にお会いして話しましょうと提案しました。一生さんは断る気でいらっしゃったみたいですが、僕は気持ちを聞いて判断したかった。でも、お母さんの葬儀を終えられて、喪主も務められて……。あまりにも状況が似すぎていたので、自分はもうプッシュできないと思ったんです。そんな心境の中で芝居を進められるほど、自分もタフじゃないので。だから、もうお願いすることからも手を引いたんです。

G:どこでその状況が逆転したんですか?

S:その話し合いで1枚のペラ紙を作っていったんです。今までは原作のはしもとこうじさんが脚本を書いて下さっていたんですが、現脚本の西条さんに客観的にこの作品のプロットを新たに落とし込んだ内容のものを書いて頂いたんです。一生さんとのミーティングが終わって、マネージャーさんと一生さんに「最後、これだけ渡させてください。これはご覧頂かなくてもいいです」といって、その紙を渡したんです。

G:へぇ〜

S:心境を無視してこれ以上お願いすることはできないので、スケジュールまで開けて前向きにご検討下さって、ありがとうございます、とお礼を言って別れたんです。そこではじめて、プロデューサーの小林さんとキャスティングがヤバい、主役がいなくなったと焦りました。それから芸人さんをはじめ40人ぐらいのリストを作って、明日朝から一人ずつ当たっていきましょうと決めたんです。その翌日に一生さんから連絡があって「やります」という返事をいただいたんです。

G:すごいですね、それ。

S:おそらく、その最後に渡したプロットの構成を気に入ってくれたのと、演出で感情の指定を排除したんです。色々な場面で一生さんが思うように演じてくださいとお願いしました。そこが決め手だったのかもしれないです。それから台本をブラッシュアップするときに、毎回、一生さんもその場に来て下さって、色々アドバイスを頂いたんです。
そこから出演者ともディスカッションしながら、その場面の経験をした人の意見を取り入れて、よりリアリティのある物語に仕上げていったんです。
一生さんも台本に意見したり、その段階から参加するのが初めての経験だったそうなので、僕らのプロジェクトの強度が弱かったからこそ、中に入ってきて下さった。そこが僕にとっても良かったと思います。

G:隙があるからこそ、自分がしっかりしなきゃと思うわけですね。

S:これは自分にも言えることですが、変に映画を知っているふりをして、知ったかぶりするのはやめようと思っていました。それで失敗してきた人を何人も見てきたので。だからわからないことは素直にわからないと白旗をあげようと思いました。そうすることで各セクションの人々が、自分たちでイニシアチブをとらないと成立しないと、支えなきゃと思わせる監督でいましたね(笑)。これは僕の勝手な解釈ですけど、そういう状況だと、各部署が普段できなかったことを色々試してみようとするんです。そうすることで、自分が作ったものを超えていった感じはしました。

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齊藤工

1981年生まれ。モデルとして活動後、2001年に俳優デビュー。出演作は映画『昼顔』(17年)『去年の冬、きみと別れ』『蚤とり侍』(18年)、ドラマ『BG 身辺警護人(仮)』など。2018年2月公開の『blank13』は上海国際映画祭をはじめとする数々の海外の映画祭で高い評価を得る。近年は国内に限らず海を越えての移動映画館『cinema bird』の活動も話題に。

『blank13』(2017年/日本/70分/クロックワークス)

監督:齊藤 工 出演:高橋一生、松岡茉優、斎藤 工、神野三鈴、佐藤二朗  リリー・フランキー 他

13年前に突然失踪した父が余命3カ月で見つかった。借金を残し消えた父に母と兄は会おうとしなかったが、キャッチボールをしてくれた優しい父の記憶が忘れられないコウジは病院へ向かい再会を果たす。しかし、2人の間にある13年間の溝は埋まらないまま、父はこの世を去ってしまう。果たして父は13年間なにをしていたのか?もう取り戻せないと思っていた13年間の空白が、葬儀当日の参列者が語る父親のエピソードで、 家族の誰も知らなかった父親の真実とともに埋まっていく…

[staff credit]

writer:牛島 康之(NO TECH)

photographer:太田 泰輔

stylist:川田力也(es-quisse)

hair&make-up:赤塚修二(メーキャップルーム)

[衣装協力]

ジャケット、シャツ、パンツ/ヨウジヤマモト(ヨウジヤマモト プレスルーム 03-5463-1500)