GRL×齊藤工独占インタビュー第二弾

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GRL(以下G):今回は『blank13』を中心にお話を伺っていきます。まず、フランス映画のような雰囲気の重苦しい回想シーンがあって、タイトルが出てからがらりと内容が変わっていくという構成がすごく面白かったのですが……
今回の作品という創作の中でこだわった部分は、どういったところでしょう?

齊藤工さん(以下S):ありがとうございます。今回は撮影準備からキャスティング、そして撮影が終わるまで、自分の中で手応えを感じながら作品に向き合えました。編集という作業になってからは絶望でしかなくて……(苦笑)
最初に台本どおりに組みあがったものを見たときに、本当に人前に出せるものじゃなくて。
でも映画監督はその絶望から少しずつ上がっていける体力のある人が務まる職業だというのを先日、他の映画監督とも話しときに痛感しました。

G:なるほど。

S:前後半でセパレートの構成にしたのも、最終的な段階で。

G:そうなんですね。

S:後半の参列者のパートもほぼエチュード(舞台などで使われる意味では、台本のない即興劇のこと)なので。設定だけは決まっていましたが、誰が何をするのかはほぼ未知の世界でした。そういうハプニングやドキュメントの要素はたっぷり撮れていたので、それをどう調理するかがカギでした。ただ選択肢がありすぎて、方向性が闇のなかに入り込んでしまったのも事実です(笑)。

G:確かに難しいですよね。

S:ちょうど『blank13』の編集が始まってその絶望を味わっていた時期に、某雑誌の企画で僕がリスペクトしているニコラス・ウィンディング・レフン監督に会う機会があって。色々と話を伺ったきに、彼に「今、こういう死生観の作品を作ったから是非観て欲しい」と自信がなかったのに言い切りました。なんでこのタイミングに、自分がリスペクトしている眩しい人に会っちゃったんだろうと思いました。

G:色々、タイミングが合っちゃったんですね。

S:またその時期にパリでヨウジヤマモトさんのショーに出してもらいました。その時、某高級メゾンのショーにクザヴィエ・ドラン(俳優/映画監督)が来ていて。またとないチャンスだったので彼にガンガン話しかけました。彼は年下ですけど、そのクリエイティビティブは自分の中で非常にセンセーショナルだったんです。彼の『私はロランス』という作品では、感情表現で服を降らせたり、水を降らせたりする感じでとにかく独創的しかも人柄も良くて。
彼にも自分の作品(blank13)を見せる約束をして。その時点では、編集は進んでいたんですけど、まだまだ自信のない段階で。レフンとドランに約束してしまったと後悔しました(笑)。

G:かなりのプレッシャーですよね。

S:ただ、土俵として考えれば彼らと一緒だと。映画というところで表現している。そして自分が近年、もっとも影響を受けた二人にこのタイミングで会うのも何か意味があるのかなと思いました。

G:もしかしたら、そういう巡り合わせだったのかもしれないですね。

S:そうかもしれません。パリの後、マダガスカルにJICA(国際協力機構)の活動支援の撮影で行きました。そこで40分かけてサバンナを通学している子供たちと一緒に映画を撮る機会があったんです。最初は日本のアニメーションを持って行って上映しようと思ったんですが、やはり権利の壁があって、それはダメだったので、映画を撮ろうという方向になったんです。
彼らは撮影の機材をみるのもはじめて。だから映画の撮影で必要な全部のポジション、カメラマンから監督、ヘアメイク、録音部、出演などをローテーションでやってもらいました。
そこで将来の自分を自己表現してもらったんですけど、歌いだす子や踊りだす子がいて、とにかく感性が豊かなんです。

G:そういう機会に触れられるのはいいですね。

S:その時もマダガスカルで、『blank13』の編集作業をしていました。街中が停電になったりして大変でしたね。その前にナイロビの空港のトランジットの時に編集の大詰めを迎えていて、その頃に前後半でセパレートにして、説明よりもエモーショナルな部分を強くしようと思っていた時だったので、その子供たちの感性を見ることができたことも良い刺激になったなと思います。

『blank13』に携わった人たちが、同じ歳・同じ感覚だったのも大きかった

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G:パリからマダガスカルへの旅が、『blank13』という作品のターニングポイントになったのかもしれないですね。

S:まさにそうですね。映画への携わり方や情熱、作品の肝みたいな部分はその旅で見えたような気がしました。最初は説明的に作り込んでいったのですが、それをどんどん省いていったんです。この映画は良い評価を頂いている一方で、否定的な評価をされた映画監督の方も当然いらっしゃって。足し算的に映画を作っている方には説明が少なく感じるようです。行間を想像させる、僕の作品は引き算の映画なので、観ている人が埋めていくという方程式なんです。だから必要な絵がないと思われてしまうみたいです。それは一つの大事な意見ですけど、僕は足し算する気はなくて、どんどん引き算していって、観ている人の角度でキャッチしてもらうという勇気のいる仕上げ方をしました。

G:観ている人に判断を委ねるのは、確かに勇気がいりそうですね。伝わってなかったら意味がないし。

S:当初から命綱として、支えてくれたのが木魚をベースとした金子ノブアキの音楽でした。煩悩の数108にちなんでBPM108のビートだったんですけど、実はそこに乗せて編集を重ねていきました。まず編集はピクチャーロックといって、絵を固めてから音をつけます。尺が決まったうえで音を乗せていくんです。

G:なるほど。

S:今回編集を担当した小川も、音をつけるMAを担当した桐山さんも、もちろん自分も映画の師匠はいないので、みんな独学で映画を学んできたんです。そこに今回音楽を担当した金子ノブアキももちろん映画音楽は初めて。今回プロデューサーを担当した小林さんも、映画がはじめて。そして実はみんなが同じ歳だったんです。だから、編集でみんなが集まったときに、共通言語がそれぞれの感覚・感性でしかないので、そこで仕上げられたのは大きかったのかなと思います。そもそも映画はこうであるという概念を誰も持っていないなかで、仕上げができたのは強みだったと今は思いますね。

G:誰もセオリーがないのはいいですよね。

S:映画とは、みたいな法則を壊すところからやっているので、逆にそれが映画に対する愛情だったりもするんです。ニコラス・ウィンディング・レフン監督も実は色盲で、彼の映画には原色が多く使われていて。すごく感覚的な映像を撮る人で、彼も何かが足りないというところからスタートしています。クザヴィエ・ドランもそういう感覚の持ち主で、僕がリスペクトしている二人は無形のモノを信じている。だからこそ、あのタイミングで会えたのは何かの巡り合わせだったのかもしれないです。彼らに観てもらったときに、逃げてないものにしなきゃなという思いは強かったので、作品を彼らに送ってみようと思います。

G:彼らの感想とかも聞きたいですね。

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齊藤工

1981年生まれ。モデルとして活動後、2001年に俳優デビュー。出演作は映画『昼顔』(17年)『去年の冬、きみと別れ』『蚤とり侍』(18年)、ドラマ『BG 身辺警護人(仮)』など。2018年2月公開の『blank13』は上海国際映画祭をはじめとする数々の海外の映画祭で高い評価を得る。近年は国内に限らず海を越えての移動映画館『cinema bird』の活動も話題に。

『blank13』(2017年/日本/70分/クロックワークス)

監督:齊藤 工 出演:高橋一生、松岡茉優、斎藤 工、神野三鈴、佐藤二朗  リリー・フランキー 他

13年前に突然失踪した父が余命3カ月で見つかった。借金を残し消えた父に母と兄は会おうとしなかったが、キャッチボールをしてくれた優しい父の記憶が忘れられないコウジは病院へ向かい再会を果たす。しかし、2人の間にある13年間の溝は埋まらないまま、父はこの世を去ってしまう。果たして父は13年間なにをしていたのか?もう取り戻せないと思っていた13年間の空白が、葬儀当日の参列者が語る父親のエピソードで、 家族の誰も知らなかった父親の真実とともに埋まっていく…

[staff credit]

writer:牛島 康之(NO TECH)

photographer:太田 泰輔

stylist:川田力也(es-quisse)

hair&make-up:赤塚修二(メーキャップルーム)

[衣装協力]

ジャケット、シャツ、パンツ/ヨウジヤマモト(ヨウジヤマモト プレスルーム 03-5463-1500)