GRL×齊藤工独占インタビューVOL4

齊藤工 地方に優良な単館映画などを見てもらいたい。

GRL(以下G):齊藤さんは、映画監督や俳優業の他にも"シネマバード"という活動もされていますが、どういった活動なのでしょうか。

齊藤工さん(以下S):簡単にいえば移動映画館です。大型スクリーンがシネコンとして都市部にしかなく、いわゆる大作映画しか上映されない地方に優良な単館映画などを見てもらいたいという思いから始めました。

G:映画人らしい発想ですね。

S:以前から、地方の劇場の特色を調べていていたのですが、書店やレンタルビデオ屋みたいに劇場の支配人の好みによるところが大きいことが分かったんです。阪本順二監督は自分の作品が上映された劇場の支配人に、いまだに手紙を書いているそうで……。だからこそ、劇場とクリエイターの繋がりみたいな関係が見えてきて。現在は閉館した北海道の「蠍座」とか大分別府の「ブルーバード劇場」など地方には特色豊かな劇場が存在していたので、チャンスだと思っていたんです。が、3.11の東日本大震災があってから被災地の劇場を調べていたら、サイトどころか劇場自体もなくなっている。慈善事業ぶりたくはないんですけど、被災地の子供たちに向けて、映画を届けるというか、日常に合ったものを一時的に取り戻すといった意味合いも強かったです。

G:なるほど。それはいい考えですね。

S:色々紆余曲折があって、映画を届ける方法を考えていたところ、海外にある移動式の映画館にヒントを得て、やっとその活動がスタートできたんです。

G:最初は被災地の子供たちからですか?

S:まずはどこから始めるかという議論になったときに、やはりきっかけとなった被災地の子供たちに映画体験をして欲しいと思いました。一応、被災地にも映画上映があり、子供たちに映画を見せているところもあったんですが、自分的にはその作品に納得がいかなかった(苦笑)。地方にも絶対映画ファンはいるはずなので、僕がその地方にいたら絶対見たいものを提案しました。回を重ねるごとに進化していって、ある回では『フラッシュバックメモリーズ3D』という作品を上映し、そこに実際にディジュリドゥ奏者のGOMAさんもお迎えして、東京でもめったに見ることができない4D上映が実現したんです。被災地以外の映画ファンが羨ましがるような映画イベントにしていきたいというこだわりはいまだにあります。

G:確かに被災地、特に子供たちにとっては特別な体験ですよね。

S:そうですね。あとはお笑いライブとミュージシャンのライブ、毎回ではないですけど地元の"食"にまつわるパビリオンも開催しました。要するにお祭りです。体感型の祭りを友達や家族、知らない人と共有することが大事なのかなと。総合芸術の軸に映画があるようなお祭りなんです。

齊藤工 被災地の子どもたちに映画体験をして欲しい

G:その活動の中から、映画作りにフィードバックがあったものってありますか?

S:それはありますね。
映画を作っていると実際にお客さんのリアクションを感じる瞬間がなくて。でも自分の選んだ映画がどう受け入れられるんだろうと思って不確かな確証でシェアして、それが見事にハマったときの感動はあります。
お笑い芸人のサンドウィッチマンさんや永野さんが所属するグループカンパニーの名物社長の中村歩さんという方が、かなりの映画好きなんです。昨年大分の豊後大野市のお寺でフランス映画の『エール』という作品を上映したんですが、二日酔いながらも(中村)歩さんが号泣していたんです(笑)。「これやばいよ、工くん!」と仰って下さって。それ以後、(中村)歩さんの反応が自分のバロメーターになりました。(中村)歩さんの心を揺さぶる作品をどうチョイスできるかが大事になってきたんです。実際に見ている方も同じリアクションをしているので。
本当に自分も心揺さぶられる作品が年間を何本か通してあるので、そういった作品を普段劇場じゃない空間で地元の人たちと共有することができれば本望です。

G:実際に大分での上映を計画しているときに、あの熊本地震があったとか。

S:そうですね。"シネマバード"を復興活動として行くべきかどうかという審議を何度も繰り返しました。実際に自分は反対派でした。精神的に余裕のないところに届けるイベントではあるんですが、物理的に余裕がないところで開催すべきではない、と思ったんです。ただ、地元の方と密にコンタクトをとると、地元の声としては"観光離れ"という現象が起こっていたので、むしろイベントをやってくれたほうが嬉しいという声を聴いて、開催させてもらいました。

G:齊藤さんも直に現地に行かれたんですね。

S:地域の方がすごく協力的に対応して下さるので、とてもやりがいを感じます。こちらが持ち込んだ企画ではあるんですけど、地元の方が自主的に"シネマバード"をキャッチして、さらに展開していってくれる……。そこで"シネマバード"に意義が生まれるなぁと感じました。
特に大分豊後大野市の明尊寺の住職が粋な方で、上映は3部構成で、夜になるとお正月だけに置かれる灯篭(竹筒にロウソクを入れ火を灯したもの)を本堂からお寺の外まで灯して下さって。映画ではフランスに行ったような気分になったんですが、上映が終わって外に出ると、和の幻想的な雰囲気になっているんです。
映画やイベントが良かったという記憶よりも、そういった瞬間的でヴィジュアル的な記憶は強いと思うんです。その瞬間を作って下さった住職には感謝したいですし、回を追うごとにシネマバードのエネルギーが増えていく感じはしています。

齊藤工 エネルギーが増えていく感じはしていますね。

G:唐突ですがGRLが提案している女性のファッションをどう思いますか?

S:女性って、靴やバッグを常にリニューアルしているイメージがあります。そこは男子も気づいて褒めてあげなきゃいけないところだと思います。だからこそ、リーズナブルに購入できるファッションはいいですよね。

G:最後にGRLを見ているユーザーにメッセージをお願いします。

S:シンプルなファッションはその人の雰囲気が大事になってくると思います。雰囲気は自分に合っているものを選べているかによると思うので、どんどんトライ&エラーを繰り返して、自分に合っているものを探していってほしいです。

齊藤工

1981年生まれ。モデルとして活動後、2001年に俳優デビュー。出演作は映画『昼顔』(17年)『去年の冬、きみと別れ』『蚤とり侍』(18年)、ドラマ『BG 身辺警護人(仮)』など。2018年2月公開の『blank13』は上海国際映画祭をはじめとする数々の海外の映画祭で高い評価を得る。近年は国内に限らず海を越えての移動映画館『cinema bird』の活動も話題に。

『blank13』(2017年/日本/70分/クロックワークス)

監督:齊藤 工 出演:高橋一生、松岡茉優、斎藤 工、神野三鈴、佐藤二朗  リリー・フランキー 他

13年前に突然失踪した父が余命3カ月で見つかった。借金を残し消えた父に母と兄は会おうとしなかったが、キャッチボールをしてくれた優しい父の記憶が忘れられないコウジは病院へ向かい再会を果たす。しかし、2人の間にある13年間の溝は埋まらないまま、父はこの世を去ってしまう。果たして父は13年間なにをしていたのか?もう取り戻せないと思っていた13年間の空白が、葬儀当日の参列者が語る父親のエピソードで、 家族の誰も知らなかった父親の真実とともに埋まっていく…

[staff credit]

writer:牛島 康之(NO TECH)

photographer:太田 泰輔

stylist:川田力也(es-quisse)

hair&make-up:赤塚修二(メーキャップルーム)

[衣装協力]

ジャケット、パンツ、シューズ/ヨウジヤマモト(ヨウジヤマモト プレスルーム 03-5463-1500)

シャツ/ヘッド メイナー(アーバンリサーチ 表参道ヒルズ店 03-6721-1683)

ハット/カシラ×ノックス(カシラ ショールーム 03-5775-3433)