GRL×齊藤工独占インタビューVOL3

齊藤工 恥をかくという作業をして広げていく

GRL(以下G):最近、映画を含めて、写真を撮られたりするなど、様々な創作活動を行っていますが、目指す方向性はどこに向かっているのでしょうか?それも演じることへの糧になっているのでしょうか?

齊藤工さん(以下S):そういった部分は正直なくて……。俳優という職業は不安定で水物だし、いつまで続くか保証がないので、俳優一本でいくというスローガンを掲げることが恐ろしいことなんです。なので、例えば自分が事故に合って今のように働けなくなったとして、できることはあると思うんです。これは皆さんにも言えることだと思います。
とにかく、俳優のための鍛錬というよりも、今の年齢で得意なことだけやっていってしまうと、40代50代が収縮していってしまうなと思います。人間は恥をかきたくないから、一度恥をかいたら、「これはやめておこう」って選択肢を制限していくんです。そうなるといつも同じパターンになってしまう。失敗はしないけど広がっていかないみたいな……。それを30代でやってしまうともったいないと思いました。むしろ恥をかくという作業をして広げていかないとこれから先、希望はないと思ったんです。集大成みたいに経験してきた時間も尊いのですが、そこはまだ自分の中で"一年生"だと思っています。

G:確かにそうかもしれないですね。無難に生きていくほどつまらないものはないですし。

S:俳優の先輩たちにも監督をすることに対して、「すごい勇気だね」といわれることもあります。だけど自分には確立して守ってきたものはないので、そこには逆に疑いを持っているぐらい。本当にオブラートぐらいの薄さしかない経歴なので。

G:絶対そんなことはないと思いますけど(笑)。

S:いえいえ。自分みたいなタイプは過信したらアウト。驕ったらその瞬間に落ちていくというのが自分のタイプとしてわかっていて、そこは戒めていかないと怖いと思っているので、逆算しているところはあります。

齊藤工 これでいいんだと思わないようにしています

G:しっかり自己分析できていて、先のビジョンを見据えている感じがしますね。

S:僕らなんかよりも、下の世代の20代の俳優は達観している人たちも多い気がします。有名になることにプライオリティを置いていなかったり、すごく冷静で感覚的に物事を考えていると思います。僕らはバブルの恩恵を受けてきた世代を見ているので、どこかフワフワして浮き足立っちゃう。

G:若い世代の役者はリアリストが多いと?

S:上の世代の例を色々と見ていると思うので、自分にフィットした道を選べるほどクレバーだと思います。

G:齊藤さんも現場に一緒にいて、そう感じたりするんですね。

S:恐ろしいなと思います(笑)。気を抜いたら"無"になってしまう怖さがすごく合って。俳優の世界はキャリアがあればいいということだけではなくて、人の心を動かせればいいんです。芝居がどううまいかではなくて、役に対して自分の色をもって演じることができる若い世代が多いので、そういう意味では自分の世代は"型にはめること"が先にきてしまうので、なんというか、ダサいなと。だからこそ"これでいいんだ"と思わないようにしています。

G:色々考える部分はありますね。どの世界で生きていくことも。

S:でも同時に、重箱の隅をつついてもしょうがないとも思っているし、重箱の中だけじゃないとも思っています。海外の映画祭に行くと共通言語として映画を語れて、イーライ・ロスとかたくさんのクリエイターたちが一年間作品を作ってというサイクルで動いているのも、海外の映画祭の在り方だったりするわけです。カンヌに照準を定めているクリエイターたちもそういうサイクルでフレキシブルに健康的に過ごしていることを知ることができて、自分も今回、『blank13』で15か所ぐらいの映画祭に出しましたけど、大事なのは来年どうやってその映画祭に帰ってくるかを考えないと、ただの"記念"で終わってしまう。一番近い自分が身を置く業界の細かい状況も意識はしていますが、映画の娯楽という部分と一方で芸術という部分を俯瞰からみて、どうやって海外の人たちに映画人として認めてもらうか、2つのアングルから意識して動いています。

齊藤工 自分は題材だと思っています。

G:映画業界に向けてと、一般のエンターテイメントとしてお客さんに向けてという2つの視点があるということですね。

S:そうですね。映画業界に向けるのはテクニック的なことではなくて、自分は"題材"だと思っています。例えば、海外でレストランを出すとしたら、僕らは日本人なので洋食を出すのはなんか違いますよね。だから海外の人が日本人には敵わないと思わせるようなものを"テーマ"にしないと通用しないと思うんです。
『blank13』も『おくりびと』という映画がヒントになっていて、日本の葬儀と火葬という文化に西洋の人は驚いたと思うんです。今回、火葬というテーマを入れたのもそういった意図があります。火葬の時間は結構、長いですよね。身内が焼かれている時間を、僕らは自然に受け入れていますけど、とんでもない時間なんです。日本の当たり前の習慣ってひとつの武器だなと思うんです。だから火葬シーンの裏側にカメラを入れたのは、海外の人に対して、"ウチはこんな料理です"という看板を出しているつもりです。また同時に、宗派によって違いますけど、立派さよりも、だれが出席するかが大事など葬式の悲喜こもごもを描いたつもりです。だから日本の人たちには他人事じゃない、理解してもらえる物語の2面性を表現しました。

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齊藤工

1981年生まれ。モデルとして活動後、2001年に俳優デビュー。出演作は映画『昼顔』(17年)『去年の冬、きみと別れ』『蚤とり侍』(18年)、ドラマ『BG 身辺警護人(仮)』など。2018年2月公開の『blank13』は上海国際映画祭をはじめとする数々の海外の映画祭で高い評価を得る。近年は国内に限らず海を越えての移動映画館『cinema bird』の活動も話題に。

『blank13』(2017年/日本/70分/クロックワークス)

監督:齊藤 工 出演:高橋一生、松岡茉優、斎藤 工、神野三鈴、佐藤二朗  リリー・フランキー 他

13年前に突然失踪した父が余命3カ月で見つかった。借金を残し消えた父に母と兄は会おうとしなかったが、キャッチボールをしてくれた優しい父の記憶が忘れられないコウジは病院へ向かい再会を果たす。しかし、2人の間にある13年間の溝は埋まらないまま、父はこの世を去ってしまう。果たして父は13年間なにをしていたのか?もう取り戻せないと思っていた13年間の空白が、葬儀当日の参列者が語る父親のエピソードで、 家族の誰も知らなかった父親の真実とともに埋まっていく…

[staff credit]

writer:牛島 康之(NO TECH)

photographer:太田 泰輔

stylist:川田力也(es-quisse)

hair&make-up:赤塚修二(メーキャップルーム)

[衣装協力]

ジャケット、パンツ、シューズ/ヨウジヤマモト(ヨウジヤマモト プレスルーム 03-5463-1500)

シャツ/ヘッド メイナー(アーバンリサーチ 表参道ヒルズ店 03-6721-1683)

ハット/カシラ×ノックス(カシラ ショールーム 03-5775-3433)